豪華外遊が露見した〝舛添要一都知事ご一行〟は、東京都が〝上澄み〟を取っているという意識を持たねばならない。

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少し前、舛添要一東京都知事の国外出張費が高すぎるという話題になった。

そもそも首長の国外出張には「二種類」あるのだと、前横浜市長の中田宏は言う。
「まず、国際会議の出席、姉妹都市関係の行事など。これは自治体が旅費を負担する場合もあるし、招待の場合もある。そしてもう一つは視察」
今回、問題になった東京都の「パリ・ロンドン」、そして「韓国」外遊はいずれも後者である。
「視察の場合は、相手からの招待、会議出席という明確な目的がないので、自分たちでプランを作ることが出来る。つまり、欲を出せばきりがなくなる。参考点を多く出すために同行人数を増やす、視察という名で訪問先を増やす、などなど。〝内輪〟の理屈で動くため、いいホテルに泊まり、いい食事を取りたいと要求がエスカレートして、いわゆる大名旅行になりやすい」
中田は市長に立候補する際、横浜市の財政再建を公約に掲げた。そのため、在任中に視察目的の外遊は一度もなかった。
それどころか、〝前者〟の国外出張の際、横浜市役所の職員が苦労していたのをはっきり覚えているという。
「横浜市には場所によって出張費の上限が決められていた。例えば、ニューヨークなら3万2千円。ところが、場所によっては本当に部屋の確保すら大変な場合がある。ニューヨークで3万円台のホテルを探すなどはかなり厳しい。役所の職員は〝市長にこんな部屋では〟と気を遣ってくれた。ぼく自身は、広過ぎる部屋は好きではないし、治安が極端に悪いとかでなければ、特に気にはならなかった。姉妹都市の場合だと、先方に頼んで、便宜を図ってもらえるホテルを紹介してもらったり、そうでなければ、日系資本のホテルに頼んだりしたということもしていたようだ」
首長の出張の際、スイートルームなど広い部屋が必要となるのは、応接用。また、会議の前など、市役所内部の打合せ場所に使うこともある。
「どうしてもこちらの部屋でお迎えする場合の応接の必要性はともかく、それ以外は臨機応変に対応できる。打合せはホテルのビジネスセンターや会議室を借りればいい。実際にぼくたちがよくやったのは、朝食会場での打合せ」
中田は横浜市長就任後、市長交際費の九〇パーセント、市長ボーナスの四〇パーセント削減を行った。それは市役所内の改革をすすめるために、自ら率先する必要があると考えたからだ。そして結果として、在任中に横浜市の借金を約二兆円返済し、累積債務を約一兆円減らすことに成功した。

豪華な外遊の深層には「東京都は特別だ」という意識がある

一方、東京都は財政不安のない恵まれた組織である。これまで腰を据えた財政改革に取り組んだことはない。
「東京都は人、そして法人諸税が集まってくる。結果として消費があり、サービス産業が発展し、地価もずば抜けて高水準で維持される。日本が全体的に落ち込んでいっても、常に時代の〝上澄み〟を東京は享受できる。それは日本がどん底に落ちるまで続くだろう」
中田は今回の〝舛添都知事ご一行〟の外遊の深層には、「東京都は特別だという意識が彼らにはある」と指摘する。
「東京都は日本を牽引していかなければならない。まだまだポテンシャルもある。もちろん、東京都が直接、他の地方自治体を支援するというのは地方財政法に抵触するのでできないが、別の形で、東京の富が日本全体に還元されるようにしなければならない。もっともこれは国が考えるべきことではある。しかし、東京都の職員も日本全体が厳しくなっていることを自覚すべき。東京都だけが、そこそこのレベルが維持できたとしても、日本全体が落ちていけばいずれ駄目になるのだから。東京都の財政に問題ないからぞんぶんに使えばいいというのは、そうした自覚がないということ」
もちろん東京都知事のような首長が国外に出る場合、安全を確保するのはもちろん、緊急時に対応できる体制や機能面で万全を期しておくことは必須である。
「航空チケットは緊急事態が起きたときに、どんなルートを使っても帰ってこられるように正規の高いチケットを買わなければならない。ビジネスクラスを選ぶことも必要だろう。大臣も首長も激務だから、現地に到着してすぐに会議がある場合など、飛行機の中で十分にに睡眠を取らなければならない。以前はファーストクラスが必要なこともあったが、近年はビジネスクラスのフルフラットシートも増えていて、申し分のない居住性が確保されている。かたや、必要性と機能性からかけ離れた甘えは、大名旅行ご一行様の外遊だけでなく、役所全体の緩みを誘発していくことになる」
日本経済はずぶずぶと沈みつつある。そんな中、東京都は〝上澄み〟を取っているという意識を持ち、身を引き締めなければならないのだ。

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構成・田崎 健太 (ノンフィクション作家 http://www.liberdade.com)