――中田宏は次の参議院選挙に出るのか。

『維新漂流中田宏は何を見たのか』(集英社インターナショナル)という著書を出していることもあるだろう、筆者も出馬を尋ねられることがある。〝信頼出来る筋〟によると自民党から出るという話を聞いたというのだ。
中田に尋ねると「参議院選挙に出ることはない。万が一、衆参ダブル選挙でも出ない」という答えがすぐに戻って来た。
中田は自民党についてこう考えている。
「自民党内の一定の割合の人は自分が目指す方向と同じ。一方で、一定の割合の人は逆の立場で、巨大官庁と既得権益を守ることに汲々としている。ぼくはこれまで日本新党、あるいは新進党、そして横浜市長の時も自民党がなかなかできないことを実行する政治を目指してきた。今の自民党には改革をしようという人とそれを阻止しようという人と両方いる」
中田の考えを簡単に整理しておく――。
「健全な保守思想を持ちつつ、小さな政府を目指す。規制緩和を進めてチャンス溢れる社会を作っていく。同時に、時代に合わなくなった統治機構を変更し、地方分権を進める。それが日本全体の活気を作り出すことになる」
二〇一二年に中田が維新の会から衆議院選挙に出馬したのは、当時の代表、橋下徹と目指す先が同じだったからだ。
「大阪維新の会は、地方分権の具体的な話として、大阪都構想を進めていた。
地方創生という掛け声でどんなに中央から補助金を出しても、疲弊した地方が息を吹き返すことはない。国全体の統治機構を変えること。それが維新の国政進出の目的だった」
ところが――。
ご存じのように維新は〝漂流〟し、〝難破〟した。(今も名前としては存続しているが、中身は全く別物である)。
この維新の他、日本新党、新進党と、中田は所属していた政党が崩れ去っていくのを目の当たりにしている。
同じ志で動き出したはずの集団が時間が経つうちに、どうして簡単にばらばらになるのか。そして、同じ過ちを何度も繰り返すのか。それは日本の政治家の悲しい性なのか――。
中田はぼくの問いに、腕組みして少し考えた。
「選挙に対する恐怖なんだろうね。自民党に勝てない。ゆえにまとまろうという話は必ず出てくる」

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したたかで狡い自民党、自らの議席を守ることを第一義としている野党議員たち

中田が所属していた時の維新の会には、国会審議で「是々非々」という方針があった。野党は政府・与党の出した案に対してまずは反対の立場を取るというのが基本だ。これに対して維新の会は、政府・与党案であっても、正しい場合は賛成、おかしい場合は(建設的な対案を出して)反対するという、至極まっとうな方針をとった。
しかし、これは理解されにくいと中田は振り返る。
「国民からは分かりにくいと言われ、マスコミからは中途半端といわれる。やがて、選挙のために野党の大同団結が必要だという〝誘惑〟に屈することになった。維新は結の党という考え方の違う集団と組んでしまった」
自民党対野党の構図は、ちびっこ相撲に飛び入りした力士を想起するという。
「大人の力士に対して、十人、二十人が束になっても敵わない。結局、一人一人、あるいは二人まとめて吊り上げられて土俵の外に出されてしまう。そこでみんな一緒になって戦おうと」
それがかつての民主党だった。民主党は身体の大きさだけは自民党と同じになった。
しかし――。
「身体の中に入っているのはちびっこ力士たち。それぞれで価値観の共有ができなかった。だから、何事も決められない。民主党が決められなかったのは、必然だった。自民党から政権を獲る以外の方針が何もなかったのだから」
自民党のしぶとい強さは、日本の社会にはびこる同質性と関係していると中田は考えている。
「町内会や自治会と同じ。属していることが大切。団体なども自民党と付き合っていることの安心感がある」
そして、自民党はしたたかである。
「TPPに対しても党内で賛成と反対があった。軽減税率、安保法制についても同じ。しかし、それで四分五裂にはならない。その他の党にない狡さがある」
今年夏の参議院選挙を控え、民主党、維新の党、社民党から共産党まで含めた、野党が選挙協力する〝野党共闘〟が進んでいるという。
中田はこの動きを「国民はなんの魅力も感じないだろう」と斬り捨てる。
「本当の意味で政権を獲ろうという政治家が野党にいない。本当の意味というのは、政権についた後を考えるということ。議席を守るためには野党同士で争わない選挙区調整が必要だ。だから、価値観の共有なしにまとまろうということになる。もはや政権を取って日本の為に何をするのかではなく、野党の国会議員としてどう生きのびていくのか、それが最大の目的のように思える」
自民党の支持基盤はかつてと比べて強固ではない。
「何が何でも自民党に投票するという人は明らかに減っている。各種団体、組織でもかつての景気がいいときは自民党と付き合うメリットがあった。実利としての自民党支持だった。しかし、今は右肩上がりではない。そして、組織の上が自民党に投票せよと行っても、下が従わない」
そして中田はこう指摘する。
「二〇一二年に政権を取り返したときの自民党の得票数は、二〇〇九年に民主党に政権を獲られたときよりも少ない。自民党よりも民主党が劇的に支持を減らしただけなのだ。自民党は弱くなっているのに、野党がもっと弱くなっている。消去法で自民党の方がましだからという人も増えているような気がする。自民党を強くしたのは野党」
自民党を倒すために野党が集まるというのは、聞こえは悪くない。しかし、価値観の擦り合わせのない共闘は、あらかじめ近い将来の失敗が組みこまれているようなものだ。国会議員たちはその場限りの選挙協力で議席を獲得して、政治家として延命するかもしれない。
しかし、それは国民の利益にはならない。

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構成・田崎 健太 (ノンフィクション作家 http://www.liberdade.com)