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大阪の街を歩いていると、〈大阪市における特別区の設置についての住民投票〉を告知するネオン表示、ポスターにぶつかる。
これは大阪都構想の賛否を問う投票だ。
先月行われた統一地方選挙で大阪維新の会は、大阪府議会(定数八十八)四十三、大阪市議会(定数八十六)で三十六、堺市議会(定数四十八)で十四を獲得している。大阪府議会の定数は今回から一〇九から八十八へと減った。その中で、維新の会は大阪府議会で目標としていた過半数には届かなかったものの、大阪市議会、堺市議会とともに第一党は確保した。
かつて大阪市特別顧問だった中田宏はこの結果をどう見るか――。
「府議会で過半数をとれなかったということで、東京のマスコミ報道では、維新はかつてのような上り調子にないという論調で書いているように思える。しかし、ぼくは、維新大善戦という結果だったとみている」
特に大阪市議会で前回の三三議席を三つも上回る結果になっていることを中田は評価している。
「『政治家の殺し方』にも書いたように、政令指定都市で過半数を獲ることは物理的に不可能。つまり定数五人の選挙区で過半数三人を当選させるためには、〝効率的〟に投票を分配しなければならない。そんなことが出来るのは共産党や公明党だけ。それにも関わらず、今回の選挙では議席を増やして、第一党の座を確保したことはすごい。大阪都構想の住民投票に向けて弾みがついたはず」
中田は住民投票について楽観的である。
「大阪維新の会の松井府知事は、府議会で過半数をとれなかったということで厳しいという発言をして引き締めている。これは当然のことだろう。ただ、ぼくは二年前から、大阪都構想が住民投票になれば通るだろうと言い続けて来た。
〝日本人には変わりたくない症候群〟というものがある。まだ見ぬ制度設計については、積極的なイマジネーションが働かず、リスク、責任論ばかりが出てくる。大阪都構想では、〝地域が分断される〟〝コミュニティが崩壊する〟〝今以上に行政コストが掛かる〟という類の話だ。また、失敗したら誰が責任をとるんだと言い出す人もいる。しかし、住民投票のような形で、賛成か反対か突きつけられると事情は変わる」
中田は自らが目の当たりにした、小泉純一郎政権下の郵政民営化を問うた総選挙を例にとる。
「あのときも反対論は山ほど出た。全国一律のサービスは維持できるのか、田舎はどうなるのか、ポストがなくなる、配達がなくなる地域が出てくる――。否定的な意見が沢山出て、国民はどちらを信じていいのか分からなかった。ただ、二者択一になったとき、国民は郵政民営化を支持した。大阪都構想についても賛成、反対の議論が深まるかどうかは別にして、同じ結果になる可能性が高い」

府知事と市長が話し合えば二重行政はなくなるというのは〝言葉遊び〟のようなものだ

大阪都構想に対して、大阪の自民党、公明党、民主党は反対の立場だ。
「府会議員、市会議員ともに今の枠組みの中で、その存在が成りたっている。都構想が実現すれば、〝都議会〟という名称になるかどうかは別にして、同じ形ではなくなる。今まで築いた選挙地盤が変わってしまうことに対する不安や反発がある。彼らの反対は統治機構改革とは全く別の次元。反橋下、反維新という問題もある」
横浜市長の経験のある中田は、大阪都構想には一貫して賛成してきた。
日本で最も規模の大きい自治体は横浜市、大阪市は二番目にあたる。
「広域自治体として考えれば大阪都は、小さすぎる。いずれ道州制に移行していくべき。一方、基礎自治体として考えたとき、今の大阪市は大きすぎる。基礎自治体の長の役割は、住民が安心して暮らせるように、生活を考えること。その意味で、自分がやったから言えることだが、横浜市や大阪市の市長はどんな人間がやったとしても、どれだけ努力したとしても基礎自治体の長としては〝失格〟。つまり、大きすぎて、問題の小学校がどこにあるのか、どの道路が狭くて危険なのか、そんなことも把握できない。
大阪市を再編して区を作り、もっと小さな基礎自治体にするのは賛成。反対論者の中には区に移行すれば、コストが増えるという指摘もあるが、これはどのように運営するかで変わってくるだろう。当然、維新の会はそこをしっかりやる必要がある」
大阪府と大阪市の二重行政、コストの無駄をなくすには、都構想は極めて有力な選択肢だと中田は信じている。
「府知事と市長が話し合えば二重行政はなくなるというのは、言葉遊びのようなものだ。例をあげれば、府と市が同じような施設を持っていて、棲み分けしようと府知事と市長が話し合ったとする。しかし、現場の役人たちは自分たちの守備範囲をきっちり守って、相手の領域まで入らない。そうやって抵抗して自分たちの既得権益、仕事を守るのが役人の習性でもある。また、二つの施設を統廃合しようとしても、それぞれの施設に国からの補助金が出ていることもある。二つの組織が話し合って補助金のあり方を見直すことなどできるはずがない」
二重行政の問題は、神奈川県と横浜市も同様である。大阪都構想が可決された場合、全国にこの流れが広まっていく可能性はあるのだろうか。
「本来、地方をどう自治するのかはその地方が決めるべき。この増刊中田宏で何度も訴えてきたように、現在の統治機構は、横浜市からもっとも小さな自治体である東京都青ヶ島村まで全て、全国一律で同じ仕組みをとるように決められている。これは明らかに効率が悪い。議会を作るべきなのか、作らない形を模索するのか、その自治体が最適な形を決めればいい。自治の形を地方に決めさせろというマインドは、大阪都をきっかけに広がっていく可能性があるだろう」
ただし――。
中田はこう付け加えた。
「一時期刺激されて各地で統治機構改革の動きが出てくるかもしれないが、実を結ぶかは疑問。良くも悪くも、橋下徹、そして維新の会のような執念がないと、実現にもっていくことは難しい」
大阪都構想の可否を決める選挙は今月一七日である――。

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構成・田崎 健太 (ノンフィクション作家 http://www.liberdade.com)