20140801

 今月一日、東京都選挙管理委員会を通じて総務省へ「次世代の党」の設立届けが提出された。日本維新の会から分党した次世代の党は、衆議院議員一九人、参議院議員三人の計二十二人で船出することになった。
 前日の会合で、平沼赳夫党首と山田宏幹事長が決まっていた。届け出の日に行われた両院議員総会で中田宏は国会対策委員長に任命されている。
 先月の「増刊中田宏」で筆者は新党の印象は、党首、そして執行部の顔ぶれで左右されると書いた。七五歳の平沼赳夫は、その知見、手腕以前に「次世代」を掲げた党の代表として、いささか違和感がある。
 今月は、中田に次世代の党の執行部決定の経緯、そして今後の方針を訊ねる――。
――正直なところ、平沼代表を始め、執行部の顔ぶれを見たとき、次世代という党名に相応しいと感じなかった。
中田 〝次世代〟には二つの意味があると考えている。まず次の世代に対して責任ある政治を行うこと。借金漬けとなった日本の体制を変えて行くこと。そして日本という国に後ろめたさを感じて、下を向いて歩くのではなく、日本に生まれて良かったなと、ささやかな誇りを持てる国にすること。この意味において、どの世代が党首になっても次世代のことを考えた政治をやろうということ。
――貴方が横浜市長となったとき、三七才だった。人生の残り時間が多かったからこそ、次世代に対しての責任感が強く、財政再建に対して熱心になれたと理解している。
中田 その通り。もう一つの意味は、次世代に対して責任をとれる人が党の担い手になるべきだということ。この点では、平沼さんも若い世代がどんどんやって欲しいと言っている。名実ともに次世代の人間がどれだけ活躍できるかが、今後とても大切になってくるだろう。
――党首の選出について聞きたい。党首の立候補は平沼氏のみ。無風選挙で党首が決まった。
中田 党員をまだ募集していないので、国会議員だけで選ぶしかない。そして立候補者は平沼さんしかいなかった。政党の党首は、議論を重ねて選挙で決めるべき。ただ、今回は突然の分党という経緯があった。平沼さんを中心に挙党態勢で、いい形で船出させるという話になった。党規約には、一年後に党員を集めた党大会を開いて、改めて代表を決めることになっている。
――つまり、一年間の暫定と考えていいか?
中田 それは受け取る側の判断に任せます。
――では、話を変えましょう。次世代の党の「基本政策」を見ると、〈一〉に自主憲法、〈二〉に安全保障、集団的自衛権と書かれている。この順序、あるいは次世代の党に関する報道を見ていると、貴方が横浜市長時代から、そして維新の会が目指してきた統治機構改革よりも、旧「たちあがれ日本」系の主張が色濃く反映されているような気がする。
中田(強く首を振って)それは違う。基本政策は練りに練って決めた。その部分が多く報じられている面はあるが、基本政策の中には明確に統治機構改革が入っている。我々が目指してきたものを基本政策から削ったものは一切ない。もちろん、石原(慎太郎)さんにしても平沼さんにしても、(自主憲法、安全保障について)長年言いにくい環境の中で言い続けてきたという印象があるから、報道ではそうした面が強調されているのだろう。8つの基本政策がある中で、統治機構改革より憲法や安全保障などが先に記述されるのは基本的なこと。
――政党の憲法ともいえる、党綱領には「新保守」という言葉を使っている。この新保守について説明して欲しい。
中田 日本では「保守」という言葉が、時代に合わない古い体制を守る「守旧派」と同義語で使われることがある。保守の本来の意味として、古き良きものを守っていくことは必要。ただ、日本の統治機構は老朽化して、今の時代についていけない。例えば、今の中央集権体制は変えなければ、地方は疲弊し沈んでいくしかないだろう。経済においても、鎖国的な思考ではなく、積極的に打って出て日本の活力を取り戻さなければならない。
 保守という言葉は偏狭なナショナリズムと結びつけられることもある。他者に対して排他的なナショナリズムは本来の保守とは全く異質なものだ。ナショナリズムとは一線も二線も引きたい。保守=守旧派、保守=右翼。両方とも間違っている。私たちが目指すのは、改革精神を持った健全な保守だ。
――この「新保守」という言葉を理解してもらうには、行動で示す必要がある。
中田 もちろん。私が横浜市長となった時点で、それまでの横浜市では、各種の式典に自衛隊が参加することはなかった。その背景には、反自衛隊の活動、圧力が存在した。しかし、各種災害が起こったとき、自衛隊は頼りになってもらわなくては困る。市民に自衛隊の存在を認知してもらうことは大切だ。そこで、市の催しなどに自衛隊に参加してもらうことにした。
 また、横浜市長時代、情報公開にも力を入れた。ありとあらゆる情報公開を徹底し、政令指定都市では公開度ナンバーワンの市役所になった。さらに、私は緑化にも力を入れた。ドリームランドという遊園地跡を遊園地の時よりも緑を増やして、市民の憩いの場とした。旧来の枠組みならば、自衛隊支持=右、情報公開賛成=左、環境重視=左だったろう。私は、右左、どちらにも区別できない(苦笑い)。

原発の是非、再稼働の論議以前に必要なのは「原発村」に対する毅然たる態度と情報公開

――大切なのは、現実の問題を解決すること。右、左の線引きは意味がない。
中田 外交も同じ。例えば、領土領海問題。日本と中国という狭い関係では、親中派、嫌中派と分けられてしまうかもしれない。つまり、全くアクションを起こさない平和主義と極端な自衛力増強主義。現実には、どちらも非現実的。
 南シナ海においては、フィリピンが我が国と同様の問題を抱えている。フィリピンは日本よりも脆弱な国防体制しかなく、事実上、国境近くの島を中国に占拠されている。痛切な危機感を抱いているフィリピンの国会議員の友人もいる。彼らと話し合い、連携して、国際社会で問題を訴えていくことも必要になるだろう。これが右か左かではない具体的アクションの一つだ。
――基本政策には「脱原発依存」と書かれている。原発について貴方の考えを改めて聞きたい。
中田 次世代の党は、旧維新の会の考えを引き継いで、脱原発依存を強力に進めていくというのが基本政策。
 原発問題は、エネルギー自給、安全性、再生可能エネルギーとのベストミックス、CO2削減、貿易赤字など様々なメリットとデメリットが入り交じっている。エネルギー自給、CO2削減、貿易赤字を考えれば原発推進、安全性を考えれば原発廃止。しかし、原発のメリット、デメリットの以前に〝原発村〟という存在がある。原発が絶対安全という主張、事故が起きないという説明を繰り返し、原発を利権としてきた人たちがいる。こうした原発村には、徹底的な情報公開を求め、毅然たる態度で切り込まなければならない。
――原発再稼働については?
中田 私個人の意見としては、危険エリアにおける原子力発電所は廃炉を目指すべきと考えている。それ以外の発電所は、何重ものチェック体制、事故を起こさないためのあらゆる手立てを打つという前提で、稼働すべきだと考えている。何よりも非常時のバックアップ電源体制を構築することが条件。
 東日本大震災の後、日本の貿易収支が著しく悪化している。震災前の二〇一〇年には六兆七七〇二億円あった黒字が、二〇一一年には二兆五六四七億円の赤字。赤字額は年々増え、二〇一三年は一一兆四七四五億円となっている。経常収支は辛うじて黒字を維持したものの、黒字金額が名目GDPの〇・二パーセントというのはほぼ零だ。
 貿易赤字の悪化の理由の一つは、火力発電に使用するLNG(液化天然ガス)の輸入増によるもの。現時点で韓国と比べて日本の電気代は約四倍。これからさらに電気代が上がっていくだろう。製造業にはボディブローのように効いていく。貿易赤字が拡大するということは、経常収支の悪化を意味する。経常収支の悪化は国内にお金が足りなくなることを意味し、国内の資金だけでは政府の借金を賄えなくなってしまい、結果として海外からお金を借りざるをえなくなる。一千兆円を超過する借金を抱えている日本にとって貿易赤字が拡大することは、そう簡単に見過ごせる問題ではない。
――このままだと債務危機に陥ったギリシアのように、経済が破綻する。
中田 その懸念がどんどん高まる。
――とはいえ、過去、電力会社は原発は安全だと主張し続けてきた。政財界、マスコミを巻き込んだ闇を感じる。このまま原発を再稼働させるのには抵抗がある。
中田 だからこそ、情報公開を進めなければならない。日本を地震列島として一括りにするのではなく、危険なエリアとそうでないエリアを科学的に区別する。その上で、福島の原発が大事故なった最大の原因は、バックアップ電源が稼働しなかったことだから、この体制を徹底的に構築する。東京電力は原発という危険なものを扱いながら、事故が起こらないことを前提としていた。透明で幾重ものチェック体制を敷いていれば、今のような事態にはならなかった。
 その一方で、再生可能エネルギー技術の開発と実用化を積極的に進め、脱原発依存を実現していくことが重要だ。火力発電は多量の二酸化炭素を排出すること、そして、今のままだと経済的に日本はまたたくまに沈んでいくということを認識した方がいい。だから、使える電源として既存原発を有効利用することと、特に再生可能電源を着々と増やしていくことは同時に進めなければならない。
――最後に、先日、日本維新の会と結の会が新党準備会を発足するとの報道があった。この新党とは連携していくのか。
中田 橋下さんと石原さんが言ったように、山の登り方は違うが、目指す頂上は同じ。橋下さんが目指す、大阪都構想は次世代の党としてバックアップしていかなければならない。もちろん私個人としては、これまで以上に推進に向けた協力をしていきたい。大阪都構想というのは、大阪府と大阪市という二重行政の解消という観点から理に適っている。加えて、住民が自らの行政のあり方を選択するという、これからの地方自治を左右することでもある。維新の会と分党したからといって、大阪都構想が原因で別れたのではない。大阪都だけでなく、日本の構造を変えていくためには力を合わせていかなけれぱならない。そうでなければ、巨大な利権構造、凝り固まった思考の人たちに対抗していけない。
 私は分党に賛成ではなかった。結の党との性急な合併方針は党分裂になると言ってきた。だが、我が意に反して現実がこうなった以上、次世代、維新、結いがそれぞれ力をつけていくことで、結果としてこの国を良い方向に変えようという人たちのボリュームが膨らんでいけばいいと考えている。

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構成・田崎 健太 (ノンフィクション作家 http://www.liberdade.com)