日露首脳会談の焦点「北方領土」——この問題の解決は急いではならない

――衆議院解散はあるのか、あるならばいつなのか?

永田町で蠢く人たちの最近の関心は、そこにある。
「総理サイド、官房長官を含めて、支持率の高いタイミングでなるべく早く総選挙をしたいと思っていることは基本」
中田宏は安倍晋三総理の意向をこう忖度する。
「国内の設備投資は伸びておらず、賃金もなかなか上がっていない。今後、経済が良くなっていくという見通しは立たない。支持率が高いうちに、選挙をして衆議院議員の任期を延ばしたいと考えるのは当然」
衆議院解散の参考材料となるのは、先日の〈新潟知事選挙〉〈衆議院補欠選挙〉の結果であると言われて来た。
中田の見方は少々違う。
「もちろんこれらの選挙も影響がないわけではない。それ以上に、決定的要因になるのは日露首脳会談」
十二月十五日、安倍総理の地元、山口県長門市で日露首脳会談が予定されている。
「それまでの日露首脳会談は日本の首脳が訪問するだけで、まともな二国間関係とは言えなかった。今回はロシア側の政治的、経済的事情もあり、プーチン大統領が来日する。それに向けて水面下で相当やりあっているという情報も入ってきている」
フランスの歴史、家族人類学者であるエマニュエル・トッドは『問題は英国ではない、EUなのだ  21世紀の新・国家論』(文春新書)の中で、〈ヨーロッパと中国は不安定な極〉であると指摘した上で、日本にこう提言している。
〈ロシアは日本にとって、アメリカとは別の重要なパートナーになりうると私は見ています。中国との地政学上の関係を視野に入れれば、ロシアと友好関係を築くことは、日本の外交上、最優先事項だといってもいいくらいだと思います〉
そしてこうも書いている。
〈ロシアの関心は領土の拡張にありません。すでに広大な国土を有しているからです。問題はむしろ、広い国土に対する人口の少なさです。領土ではなく人口こそ、ロシアの問題なのです〉

納沙布岬 この背後、わずか3.7kmに歯舞諸島の貝殻島

納沙布岬 この背後、わずか3.7kmに歯舞諸島の貝殻島

しかし――。我々、日本人はロシアのしたたかさを身にしみて知っている。ロシアとの交渉は一筋縄ではいかないだろう。
今回の日露首脳会談を読み解く、一つのキーワードがある。それは「新しいアプローチ」だ。
今年九月二日、安倍総理は「第2回東方経済フォーラム」に出席し、プーチン大統領と会談。終了後に「新しいアプローチに基づく交渉を今後具体的に進めていく」と語った。
「情報を精査すると、歯舞と色丹の二島返還はすでに織り込み済み。問題は残る二島。面積が広く、人の営みが活発な国後、択捉島をどうするか」
中田は三つのシナリオを想定する。
一つは、二島返還、残り二島についても日本側の主権を認めること。
「これならば百点満点。ロシア側が主権を認めるのならば、返還は香港、マカオのように何十年、あるいは百年後でもいい。しかし、この可能性は極めて低い」
二つ目は、二島返還の上で、残り二島についてはロシア側帰属と確定、問題解決とする。
三つ目は、やはり二島返還、残り二島は双方が主権を主張するという玉虫色の解決――。
「安倍総理が二つ目を受け入れるとは考えにくい。想定されるのは三番目。双方が主権を主張し、事実上はロシアの統治下として固定化される。新しいアプローチというのは何を意味するのか。解決のために何らかの新しい提案をしているのか、が焦点となる」
この解決に対する評価が、衆議院解散を決めると中田は見ている。

日本はあらゆる手で自国の領土を護る決意のある国であるというメッセージを送り続けなければならない