中田宏チャンネル_160929_334_エアインタビュー

日本のサッカー専門誌“エアインタビューが横行しているのではないか?”と告発したジャーナリストがいます。

とくに海外のサッカーの名監督・選手はなかなかインタビューを受けず、記者会見以外では難しいというのが常識のなかで、日本のサッカー誌にルイス・エンリケ監督(FCバルセロナ、スペイン)、ハメス・ロドリゲス選手(レアル・マドリード、スペイン)、ジネディーヌ・ジダン監督(レアル・マドリード、スペイン)、リオネル・メッシ選手(FCバルセロナ、スペイン)など、そうそうたる名監督・名選手の一問一答インタビューが載っているのだそうです。
これに対して「これ本当にインタビューしているの?」と疑問を呈したのが、ノンフィクション作家・田崎健太氏です。
私は普段はサッカー誌は読みませんが、田崎さんのことはよく知っています。
実は、これまで何度も田崎さんのインタビューを受けたことがあるのです。
エアインタビュー問題について、今回は私から田崎さんご本人に電話でインタビューをしてみました。

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中田宏 田崎さん、お願いします。

田崎健太 お願いいたします。
レアル・マドリードのジダン監督は就任以降一度も個別インタビューを受けていないんです。地元のスペインのメディアに対してさえ、です。ハメス・ロドリゲス選手も同様です。世界的に注目される人たちは、個別にインタビューを受けず、記者会見で対応するというのが残念ながら今の流れなんですよ。
それにもかかわらず日本の雑誌にはなぜか一問一問でインタビューか出ていた。内容を読むと、ジダン監督やハメス・ロドリゲス選手やメッシ選手と非常に親しい感じの会話が出ている。「これはおかしいだろう」と思って調べ始めたのが最初でした。

中田 田崎さんがジャーナリストとしてこの問題を取り上げるということは、かなり確信を持っているということですよね?

田崎 僕自身はジーコ・元日本代表監督やドゥンガ・元ブラジル代表監督を個人的に知っていてインタビューをとってきました。しかし、スペインのビッグクラブではクラブ側がメディアを管理しているのでインタビューが録りにくいのが現実です。
それでも最初はまったくのデタラメだとは思っていませんでした。調べていくうちに「あれ?これおかしいぞ?」という感じになりました。
僕自身もスペインのマドリッドまで調べに行きました。いろいろ周辺取材をしているうちに、これらはエアインタビューであると思いました。
もちろん囲み取材(対象を複数の記者やレポーターなどが取り囲み取材すること)は誰でもできます。しかし、それは一問一答のインタビューとは明確に区別しなければならない。一問一答できちんとインタビューはやっていないことは確信しましたね。

中田 すべてが嘘かどうかはともかく、一問一答でしっかりと向き合って「インタビュー、お願いします」「はい。今日はよろしくお願いします」という形のインタビューを録ったと思えないのに、そういう形式でまとめて雑誌に掲載しているということですか?

田崎 そうですね。一方で、構成記事というやり方もあります。構成記事というのは、筆者の主観、過去の取材データ、あるいは他の記事などを引用して原稿を書く。
ただし、インタビューというのは一問一答で「これはこうだよね」「いやそれはそうじゃない。こうだ」といった丁々発止のやりとりがあるはず。そうでないのにあたかもインタビューしたように書くことはしてはならない。
サッカーはエンターテインメントでもあるので、政治取材とは少し違います。
ただし、それでもやっぱり“やって良いことと悪いことがあるだろう”というのが僕の考えです。

中田 私もインタビューを受ける時には“インタビュワーはいったい誰なのか”は気にします。
まとまった時間をとって、何かに答えたらそれに対する先方の反応や質問がまた来て、それに対してまた答えて・・・ということを予想して受けますから、かなりしっかりとした場ということになりますよね。

田崎 当然そうです。
中田さんもそうだと思いますが、誰がインタビューをするかによってかなり引き出す内容が違ってきますよね。
僕(田崎)がやるのか、池上彰さんがやるのか、田原総一郎さんがやるのか、或いは一度も会ったことがない新聞記者がやるのか、それによって当然内容も変わってきますし、そこがインタビューの面白さでもあります。
そこにこだわって僕はインタビューをいろいろ録ってきました。
例えば先日亡くなったジョアン・アヴェランジェ・元FIFA会長のインタビューをしたことがあります。これは著書『電通とFIFA』(光文社新書)でも触れていますが、彼に二度も直接話を聞いた日本人はぼくだけです。自分自身が今までインタビューにこだわってきたので、エアインタビューのようなことがポツポツとではなく、常習化しているのは問題じゃないか、とにかく誰かが声を上げなければいけないという思いでした。

中田 この議論がどういうふうに決着をしていくのか。
難しいところかもしれませんけれども、ちゃんとウォッチしていきたいと思います。
ありがとうございました。

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田崎さんに今回は“私が”インタビューしましたが、通常は“私に”インタビューするジャーナリストとして何度もお目にかかっています。
こちらの思惑どおりの提灯記事を書くようなジャーナリストではなく、ずきっちりと取材を行う方であることをよく知っているので、改めてご本人に話を聞いた次第です。
エアインタビューなのかどうなのか。
田崎さんの言葉どおり、サッカーはエンターテイメントではありますが、記事内容は当然、購入した読者には極めて重要なことですから今後も注目していきます。

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