20140917JNTO

 昨年、訪日外国人が初めて1000万人を突破しました。大幅なペースで増え続け、上半期は前年比26.4%%の伸びを示しています。

 政府は平成15年に「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始し、ビザ発給要件の緩和や消費税の免税品目の拡大など、さまざまな施策を実施してきました。

 その後、平成22年、政府は観光を成長戦略の柱の一つと位置づけ、訪日外国人数を東京オリンピックが開催される平成32年に2000万人に、10年後の42年に3000万人にするという計画をたてました。昨年の1000万人達成は、その一里塚とも言えるでしょう。

 ただ、1000万人を突破しただけで、浮かれている場合ではありません。世界で33位、アジアで8位に過ぎません。日本には豊富な観光のコンテンツがありますが、これまでは物をつくって輸出することに力を入れるばかりで、外国人を日本に呼び込むことを怠ってきたと言えます。

 裏を返せば、日本の観光産業はこれから大きく成長する余地があるとも言えます。

 

 では、訪日外国人が増えることは、わが国にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

 まず、一つには経済効果です。日本は少子高齢化が前例のないスピードで進行し、経済のパイが縮小傾向にあります。また、巨額の財政赤字もあり、かつてのような大規模な経済対策を実施できません。

 そのような状況下、訪日外国人が増えるということは、日本の経済活性化にとって大きく寄与するはずです。

 世界にはそれほど観光のコンテンツがなくても熱心に観光誘致を推し進め、日本より多くの外国人観光客を受け容れている国が少なくありませんが、それらの国々は外需を「内需化」させなければ自国の経済がなりたたないというという切迫した事情を抱えています。これまで製造品を海外へ輸出することが基本だった日本は、そうする必要がありませんでしたが、製造拠点の多くが海外に移転したいま、日本は産業構造の転換を余儀なくされています。訪日外国人を増やすということは、そのような意味でも時宜にかなっているというわけです。

 

 また、外国人に来てもらうためには、自分たちにどのようなコンテンツがあるのかを見極め、それらを磨かなければなりません。つまり、自分たちの優れた点と欠点を真剣に問い直す、いい機会になるということです。

 個人でも企業でもそうですが、自らの長所と短所を知ることから成長の第一歩が始まります。

 

 次に、訪日外国人が多くなれば、異なる価値観との相互理解が深まり、文化交流や経済連係、さらには安全保障においてもプラスに作用するということです。

 日本は古来、独自の文明をもち、世界でも類い希な文化を築いてきましたが、ともすれば異なる価値観とのギャップを体験する機会に乏しかったともいえます。相互理解が深まれば、さらに訪日外国人が増えるという相乗効果が期待できます。

 

 世界でもっとも権威があるとされる旅行雑誌の一つ、米国の『トラベル+レジャー』誌は、今年の7月、読者による世界の観光地の人気投票の結果を発表しました。

 なんと京都が初の第1位に選ばれています。ここ数年、日本政府観光局と連携し、さまざまなプロモーションをしてきたことが功を奏したと考えられています。

 また、米国の金融誌『インスティテューショナル・インベスター』が発表する世界のホテルランキングは、世界でもっとも権威があると言われていますが、2013年版で「シャングリ・ラ ホテル 東京」が初めて世界一の座を獲得しました。これも、外国人客を多く受け入れ、そのきめ細やかなサービスが評価された結果でしょう。

 

 一方、多くの課題もあります。訪日外国人の多くが東京や京都など、一部の都市にとどまっているというのもそのひとつでしょう。

 安倍政権は地方創成を掲げていますが、いかにそれぞれの地方の魅力を引き出すことができるのか、地元と連携し、早急に対策を打つ必要があると思います。

 世界のなかでの日本、日本のなかでのそれぞれの地方。「観光」というキーワードによって、その独自性が高められるはずです。